Column

乗車可能なサイズは?

2006/4/30
追記 2008/3/24
追記 2009/2/18
更新 2015/3/22

(2015/3/22)
追記

一部で2006年当時の製品の記載もあり、現在と合わない箇所もありますので、追記して記しました。

(2009/2/18)
一部追記しました

  その後、このページに関するお問合せなどもあり、乗車可能身長について追記を行いました。専門的な知識はまだまだありませんが、体に合った自転車は、難しいことでしょうが、また反面、あれこれ考えることは楽しいことでもあります。

(2008/3/24)具体例を追記しました

  久々の更新で失礼いたします。フレームサイズの選び方については、なかなか難しいところがあります。その後お客様とのメールご質問のやり取りで、サドルの高さなど、より具体的な例で追記したほうがいいのかなと思った部分があり、追記をいたしました。併せてご参照ください。

同じサイズなのに
車種によって変る?

  このページに関するご質問や、ご意見を戴くことがありました、ご覧戴いているということ、うれしくなります。開いたとたんに、細かいテキストページが出てきて、書いてあることはベーシックなのは分かるが、老眼鏡が必要なくらいちょっと・・・などのお声もあります(追記:その後テキストの行間を空けるなど、レイアウトを若干変更しました 少しだけ読み易くなったと思います)。こちらは少し反省しておりますが何とかご了承いただきたく思います。先日はハンガー(BB)下がりのことについてご質問を戴きました。当たり前のように設計されていますが、MTBはBBが高くて、ロードは低い。同じフレームサイズでも、跨げるものと跨げないものがある。あらためて考えると不思議なことです。今回はフレームの寸法や、乗車可能のサイズについて触れてみたいと思います。

乗車可能適正身長とは

  乗車可能サイズについてですが、カタログには乗車可能身長が記載されています。身長からの割り出しが、目安として一番分かりやすいことから記載されているのですが、、逆のときはちょっとしんどいかもしれません。自転車は跨ぐものですから、身長だけではサイズの選定が難しいところがあり、乗車可能身長はあくまで目安とされた方がいいようです。

(2015/4/4)追記など

  以前までアップしてた内容では、ギヤ比の例として2010年頃まで発売していたBDC等を上げていましたが、生産終了をして久しくなりました。このコラムは追記更新する場合でも、極力アップした時の内容を残すようにしていますが、現在において上記を例として上げるのも現実的ではないので、現在のモデルでの例に書き換えています。

(2009/2/17)追記

  上で、「同じ身長でも脚が長い場合は目安以上の大きさサイズに乗れますし・・・」とありますが」、確かに跨ぐ分にはいいのだけれど、例えば脚が長いということは、その分上半身が短くなり、大き目のフレームサイズ、その分トップチューブも長い、すなわちハンドルが遠い。このように考えるとどうなのか、と言う疑問もあります。ハンドルまでの距離も含め総合的な乗車ポジションの理論は、もっと難解になりますし、まだまだ当方の知識も不足してます。ここでは、まずは安全に、かつ最適に自転車に跨いでもらうことを前提で、ご説明させていただくこと、ご了承ください。ひとついえることは、上半身が短くなっても、脚の長い方は、腕も長いのでその分をカバーできるのではないかとも思いますが、一般論であり絶対でもありません。また仮にまったく同じ体格をされている方が二人おられても、片方の方にフィットした自転車が、必ずしももう一方の方にフィットするとも言えません。体格が同じでも、各関節の動きも異なりますし、肉付きによっても変わってくるはずです。また普通歳を重ねると、股関節を含め動きが悪くなってきます。若い時分にのっていたサイズよりワンサイズ低いものを選ぶ方がいいという現実もあります(←自分のことではありません)   このように、全体的なサイズ、フレームスケルトンを考えることは非常に難しいと思います。一人ひとりにフィットするのが難しい3つプラス1つの「ル」がありまして、ハンドル(下記で述べるハンドルステムも含む)、サドル、ペダル。全て自転車の中で体に触れるパーツです。この中でペダルはともかく、サドル選びは難しい。それだけに自分にぴったりのサドルを見つけたときは嬉しいものです。スポーツバイクのサドルは、良くできたもので、一部の特殊なサドルを除いて、全て取り付けに互換性があるのが優れたところです。プラス1つの「ル」はバイシクルそのものです。自転車はいい洋服やメガネなどと同様に、専門店さんでできる限りご自身に合った設定でお渡しされるはずです。しかし乗り込むにつれ、使われ方も、走り方も変わってきます。体の動きも変わってくるでしょう。お店と相談しながら、サドル同様に自分によりフィットする自転車に育てていくのも、難しいですけども、スポーツバイクならではの楽しみでもあるのです。

フレーム各部の寸法
(2008/3/24 追記)
スタンドオーバーハイトの計測N2を追記しています

  具体的にはフレームサイズやその他フレーム寸法が、サイズ選定の基準になります。しかし、軽快車のように27インチや26インチだと、車輪サイズのことと分かりやすいのですが、スポーツバイクの場合はフレームサイズというので悩まれる方も多いと思います。カタログの巻末には、フレームの寸法図が表記されていて、専門的でそれっぽいのはいいのですが、フレームサイズのほかにトップチューブやら、その他の寸法が書かれていて、さらに混沌としてきます。それだけ寸法に細かいスポーツバイクですから、せっかくなら体にあったものを選びたいですね。
  まず、車輪径ですが、これは部品の仕様書に書いてるとおりです。26インチや700Cなどの寸法については、以前にアップした「ホイールサイズについて」をご覧ください。ときどき誤解があるのですが、車輪径が大きいほど自転車に乗れる体格も大きくなると思っておられることがあります。しかし必ずしもそうではありません。スローピングフレームという、フレームの上のパイプ(トップチューブ)が前上がりになっていて、サドルを低くセッティングできるものが普通になっています。26インチの軽快車にしか乗ったことが無いから、700Cはあきらめようと思わないで、フレームサイズやその他の寸法をご検討ください。一般的に26インチの軽快車のフレームサイズは410mm~450mmで、700CのラレーMRC(マリオン・クラシック)はフレームサイズが400mm。これは、26インチの軽快車を乗れる方なら、乗れてしまうサイズなのです。フレーム各寸法の呼び名と、簡単な説明を下記に示します。ここではサイズ選びに重要な寸法だけを述べることにしますが、下図に出てくるトレールやその他乗車可能サイズに関係のない寸法については、後日に譲ります。
(トレールについては、別項「小径車への賛歌」で少し説明しています)

ジオメトリ図
記号 寸法名称 寸法計測部分
A フレームサイズ BB中心からシートチューブ先端まで
B ヘッドチューブ ヘッドチューブ長さ
C トップチューブ トップチューブと平行の芯~芯間
D トップチューブ水平 ヘッドチューブ交点からの水平仮想寸法
E フロントセンター BB中心~フロントハブ軸間距離
F リヤセンター BB中心~リヤハブ軸間距離
G ホイールベース 前後ハブ軸間距離
H フォークオフセット フロントフォーク前方へのオフセット量
J BBドロップ 前後ハブ軸線からのBB下がり寸法
K BB幅 ボトムブラケットシェル幅
L オーバーロックナット リヤハブエンド幅寸法
M トレール ハンドリングの特性等を表す値
α ヘッドアングル ヘッドチューブの地面に対する角度
β シートアングル シートチューブの地面に対する角度
N1 スタンドオーバーハイト1 トップチューブセンターでの地上高
N2 スタンドオーバーハイト2 BB中心垂線でのトップチューブ地上高
P サドル地上高(低) サドルを最も下げたときの地上高
Q サドル地上高(高) サドルを最も上げたときの地上高

A~Qの各記号は便宜上振っている記号で、各寸法に対して決まった記号ではありません。
各モデルの実測値については、各モデルのページのDRAWING(フレームスケルトン)のメニューボタンをクリックしてご覧ください。
(スタンドオーバーハイトは、メーカーによって異なる場合があり、2008ラインナップより、上記N2のBB垂線でのトップチューブ高さ寸法を加えています)

(2008/03/24追記)
サドル地上高
サドル高イメージ

上図はサドル地上高(低)とサドル地上高(高)の実例です。サドル地上高(低)は文字通りサドルを一杯下げたときの地面からの高さです。モデルによっては、シートチューブにボトル台座があって、そのままでは写真のように一杯下がらない場合がありますが、そのときはシートポストを適度な長さに切断する必要があります。お求めの販売店でご相談ください。サドル地上高(高)の場合、シートポストを限界線まであげたときの地面からの高さです。シートポストには、たとえば「MAX LINE」と言った表記でこれ以上ポストを上げないでくださいという表示があります。限界線が見える状態まで上げるとシートポスト固定不良や、シートポストの折損など重大な事故につながりかねません。絶対に限界線が見える状態まで上げて乗車しないでください。

フレームサイズ

  さて、そのフレームサイズですが、フレームの立のパイプ部分(シートチューブ)の長さを言います。すなわちサドルがどのくらいの高さにセットできるかに関わってきます。フレームサイズの測り方は、ラレーも含めてギヤクランクの軸の中心から、シートチューブの上端までを言うのが普通ですが、中にはシートチューブとトップチューブのパイプ中心線の交点までを言うのもあったり、トップチューブの上側まで言うのもあったりします。この辺は確認が必要です。またインチで表しているものもあります。1インチ=25.4mmです。昔は533mmというのがスポーツ車の標準サイズという時代もありました。。随分中途半端な数値ですが、25.4で割ると21インチというのが分かります。633mlはいつもお世話になっている体積ですが、これも何か謂れがあるのでしょう。いや、最近は第3の何とかで500mlのロング缶にお世話になっているのが多いのですが・・・。
  533mmは、400mm台が一般的なフレームサイズになった現在、随分大きなイメージがありますが、これでも成人男性の平均身長165~170に合ったサイズとされていました。これも当時スローピングフレームもなく、スタンドオーバーハイト(後述)もそれほど重視されなかったことによるのかもしれません。

乗車可能サドル地上高

  フレームサイズでは、大体の自転車の大きさが分かるのですが、実際にはサドルが付いての高さになります。サドルの厚みも色々ありますし、サドルを取り付けている支柱(シートポストまたはシートピラー)によっても設定できるサドルの高さが変ってきます。フレームサイズよりも、サドルがどれだけ上げられるか・下げられるかが、乗車できるかどうかのポイントになります。
  自転車、特にスポーツバイクでは、ライディングポジションの設定について、色々と意見があります。乗車する自転車、使用用途などいろんな条件で、ライディングポジションのセオリーが変るようです。いかにマンパワーを、用途に応じて適切に伝えるかを考慮しているのですが、このことについては、いろんな意見もありますし、説明も長くなりますので、省かせていただきます。「自転車 ライディングポジション」等で検索をかけられれば、沢山のページをご覧戴くことができるでしょう。
  大事なことは、検討している自転車に乗れるのか、跨げるかどうかが一番の問題でしょう。ライディングポジションのセオリーはさておき、安全を考えると自転車に跨ったときに、足が地面につくかどうかが大事です。お店に目指す自転車があれば、跨がせていただくこともお願いできるかもしれませんが、綺麗にディスプレーされていると躊躇してしまいます。ましてやその自転車が無く、取り寄せになると実際に跨げるのかどうか分かりません。お店の人と相談すると教えてもらえるのかもしれませんが、相談するのにちょっと勇気がいるかもしれませんね。

乗車イメージ

  まず必要なのはサドルに跨って両足が地面につくことです。片足しかつかない、あるいは両足ともつかないでは、自転車を停止したときに着地する手段が自転車に降りることしかありません。安心なのは両足が十分着くことですが、べったりとまでは行かなくても、ヒールの高いパンプスをはいたときくらいの着地が欲しい気もしますが、実際にはこの高さでも、スポーツバイクでは、まだ少々低いポジションです。ちょっと怖いかも知れませんが、バレリーナよろしく両方のつま先がつくくらいでも乗車可能な高さです。

そこでサドルの高さをカタログなどで見てみると大体の目安がつきます。ラレーではその数値をすべてのモデルについて記していますので参考にしてください。

サドル高さから乗車可能なモデルを探す

  現車が無くても、何か違う自転車で試してみてください。今お乗りの自転車、あるいは誰かにお借りして、サドルを上げ下げして、またいでみて両つま先がつく高さまでサドル高さを調整します。サドルの高さが決まれば、地面から垂直にサドルの高さを測ってみます。これがあなたの乗車可能なサドル高さです。次にフレーム寸法図でサドルの最低サドル高さを見てみます。たとえば乗車可能なサドル高さが880mmとします。お目当ての自転車がMRCだとサドルの最低地上高が780mmですから、MRCで乗車可能なサドル高さに設定するとシートポストが880-780=100mm上げることができると言うことです。シートポストは、もちろん目一杯下げて乗ることもできるのですが、最低でも40~50mmほど上げて乗れるようなサイズを考えてください。やはり場合によっては、いつもバレリーナ着地では怖いときもありますし、少し下げて安心して乗りたい場合もあります。
  今度は逆に身長が大きい方の場合。乗車可能サドル高さが960mmだったとしたら、MRCは最高サドル地上高が950mmですから、サドルを最高に上げても可能サドル高さにはなりません。低い分ですから乗れないことは無いのですが、スポーツバイク的なポジションを取ることが難しいです。可能サドル高さが900mmとすれば最高サドル地上高950mmまであと50mmの余裕があります。せめてこのくらいの余裕が欲しいところです。サドルを目一杯上げて乗ることは、後述するトップチューブ長さやその他の寸法で窮屈に感じられることにもなります。
  シートポストには、「これ以上上げないでください」という限界線の表示があります。シートポストの下側から大体10cmくらいのところに表示してある「MAX LINE」などの表示です。シートポストを限界線以上に上げて乗ることは、はめあいの強度の関係からも絶対に避けていただきたい使用方法です。

(2015/3/22追記)
RFLを例に説明します

  上記では、以前のモデルであるMRCを例に挙げていますが、わかりやすいように現在のモデルであるRFLを例に挙げてみます。下記はカタログの寸法表でRFL450mmのサドル最低地上高(Saddle Height (Lowest))は783mm、最高地上高(Saddle Height (Highest))は960mmです。
  乗車可能サドル高さが、880mmの場合、サドル高さ880mmからサドル最低地上高を引いて、880-783=97mmになり、おおよそ100mm=10cmほどシートポストが上げられることになります。ちょうどいいサイズともいえます。
  乗車可能サドル高さが、960mmの場合、RFL450mmの最高地上高が960mmですから、上限一杯になり、このサイズでは無理があります。530mmを選んでいただいても、最低地上高が856mmですから、960-856mm=104mmで、シートポストが約10cm上げられます。530mmを選んでいただいても十分と言えます。

サイズチャートイメージ
スタンドオーバーハイトも大事です

  次に大事なことは、サドルに跨ぐのでなく、フレームに跨いだときの高さです。信号待ちなどでサドルに跨ったままでなく、サドルの前に出てフレームを跨ぐことが良くありますね。このときは両足がべったりと地面につくのが安心です。
  しかし、フレームを跨いだときにフレームの高さが高いと、怖~い・痛~い股裂状態になってしまいます。フレームを跨いだときの高さの目安になるのが、スタンドオーバーハイトと呼ばれる寸法です。フレームの上のパイプ(トップチューブ)の高さを言います。トップチューブは、以前はスポーツ車では地面と平行が当たり前でしたが、現在はスローピングフレームで、トップチューブが前上がりになっており、前では高くなりますし、後では低くなります。スタンドオーバーハイトは、トップチューブの真中でのトップチューブの地面からの高さを言うのが普通です。この位置は大体サドルから降りてフレームを跨いだときの位置になります。ラレーのフレーム寸法図では、スタンドオーバーハイト寸法も記載しているので参考にしてください。普通に立ったときの股下寸法が、スタンドオーバーハイトよりも大きいと、フレームを跨いだときに股下に余裕があり、まずは安心です。股下寸法よりもスタンドオーバーハイトが高いと、フレームを跨いだとき「チ○チ○が痛い」というちょっと悲惨なことになります。昔は、先ほど述べたように以前はトップチューブは地面と水平で、今ほどサドルをあげて乗らないのが普通でした。スタンドオーバーハイトは股下寸法よりも高くなってしまいます。それでも乗りこなしている、いや乗りこなすべきだということも言われましたが、ビギナーにとってはつらいことです。

  スローピングフレームが普通になり、サドルを少し上げて乗ると言うスタイルが普通普通になり、サドルを少し上げて乗ると言うスタイルが普通になったことは、スタンドオーバーハイトも余裕ができ、それだけスポーツバイクの門戸を広げたと言う意味で喜ばしいことでもあります。股下寸法=スタンドオーバーハイトが最低条件、股下寸法≧スタンドオーバーハイトだとより安心です。マウンテンバイクで本格的に山へオフロードへ行くのなら、十分に余裕のあるスタンドオーバーハイトを確保すべきです。とっさのときに十分に足がつけることは、特に路面に凸凹の大きい山岳地では必要です。

スタンドオーバーハイト
(2008/3/24追記)
股下寸法を計ってみる

別に右のヒトは拷問をされているわけではありません。なんだかイタそうな図ですみません。
  股下寸法を計ってみてサドルの高さや、スタンドオーバーハイトの目安になる股下寸法の計測例です。柱の傷がついた背の高さを測るように壁にもたれて、足の間に数cm程度の厚みのものをはさんで持ち上げ股下寸法を計ります。
  上記で述べた両方のつま先が着くサドルの高さは、股関節の動きや、足の大きさにもよりますが、これで計測した股下寸法に17cmを足した寸法が目安になります。たとえば股下寸法が、73cmの場合、
  73cm + 17cm = 90cm=900mm

股下寸法測定図

90cmがサドルをまたいでつま先が着くサドル高さになります。ここでプラスする17cmは身長170cm程度の男性の場合の数値であり、足のサイズが小さい女性や、最近股関節の動きが昔ほどじゃないなぁ・・・と思っておられる方は、少し少なめ、たとえば15cmくらいにしたほうがいいでしょうし、アメリカから靴を輸入しないと・・・という立派な体格の方は、19cmくらいにしたほうがいいかもしれません。
  マウンテンバイクSWDがどうだろうか、とします。2008ラインナップのSWDは420mmサイズでサドル地上高(低)が778mm、470mmサイズでサドル地上高(高)が824mmです。上記で出た90cm=900mmから、サドル地上高(低)を引くと
  420mm: 900-778=122mm
  470mm: 900-824=76mm

サドル高の例

420mmだと122mm=約12cm、470mmだと76mm=約7.5cmシートポストを上げて乗ることができることになります。どちらでも乗車することはできそうです。しかし、これはつま先がつく高さです。初めてスポーツバイクに乗るときや、街中をのんびり流すときは、ちょっと高く感じるかもしれません。そのような場合は420mmのほうがいいでしょう。サドル高さの設定は各個人のお好みの問題もありますので一概に、420mmがいいとは言えません。いずれにしましても、つま先が着く高さに設定したとき、サドルを下げられる余裕を残したサイズをお考えください。

サドル高

  スタンドオーバーハイトは、股下寸法以上であれば、トップチューブをまたいだときでも、トップチューブが当たることがありません。股下寸法73cmであれば、420mmサイズでスタンドオーバーハイトと、ほぼイコールですから問題ないと思います。随分以前は、この股下寸法に25cm引いた寸法がフレームサイズという決め方もありました。73cmですと、73-25=48、480mmと言うことになります。この算出はスポーツバイクに乗りなれた方であって、フレームもスローピングフレームが無かった時代の算出方法です。スローピングフレームが一般的になり、コンパクトなサイズが選べる現在、この算出方法に拘る必要性は無いように思います。

乗車時のサドル高さ

フレームサイズ、スタンドオーバーハイトが分かれば、大体ご自身の乗車可能なモデル・フレームサイズの候補が出てくるかと思います。そうして決めた自転車に実際に跨ってみて、実際に乗車するときのサドルの高さを設定してみましょう。スポーツバイクとしての適正なサドル高さは、図に示したように、クランクをシートチューブの延長線上に下ろしたときに、足の踵(かかと)を乗せてみて、軽く膝が曲がる程度の高さになります。先ほど両つま先がギリギリ着地する高さと言いましたが、おそらくこの高さが、実際にペダルに踵を乗せて軽く膝が曲がる高さと大体一致するのですが、自転車によって異なってきます。

乗車時のサドルの高さ

  ロードでは一致しても、MTBでは踵乗せ設定で適正高さにすると、今度はつま先が着きにくいかもしれません。これが冒頭で述べた、BB高さが影響しているのです。(後で説明しますが、実際にペダルを漕ぐときはペダルに踵を乗せません。これはサドル高さ設定のときだけです)
BB高さあるいはBB下がりは車種によって、設計が異なります。一般的にMTBはBBが高く、ロードは低めに設定されています。これはロードでは、低重心にして高速安定性を高め、MTBでは凸凹の激しいオフロードを考慮してBBを上げてギヤなどが路面に接触しにくいようにしているのが一般的な理由ですが、低重心がすべて安定性につながることでもありません。手のひらで錘がついた長い棒を倒れないように保つことを考えてください。重い錘が高いほう(高重心)が倒れにくいようにコントロールしやすいはずです。バイクトライアルなど、低速でマシンを倒さないように安定させるには、BBが高く高重心のほうがコントロールしやすいこともあり、またギヤなどが当りにくいことも考えて、普通のMTB以上にBB高さを上げていることが多いです。また軽快車では、ペダルが歩道と車道の段差などで、できるだけ当らないようにBBを上げ気味にすることがあります。軽快車ですから高速の用途でもありませんし、コントロール性にも一役買っていることもあるでしょう。

ロードとMTBのBB高さ比較
ペダル足の位置と適正サドル高さでライディングも美しく

  ペダル踵乗せ設定でサドル高さを決めたとき、つま先が着きにくくても乗りこなせる術はありますが、怖い気がするのであれば、無理に乗りこなそうとせず両つま先が着地する設定に戻すことをお勧めします。いずれにしてもこれらの設定は、実際に乗ってみると、普通に乗っている軽快車のサドル高さよりかなり高い気がします。しかし実はこのサドル高さが、ある程度スピードを上げて、ある程度距離を走っても疲れないサドル高さでもあるのです。
  一般に軽快車に乗っておられるポジションは、クランクが下がったときも膝が大きく曲がり、時にはガリ股状態にもなっています。これではペダルを踏みおろすときに十分なパワーが使いきれていません。また、ペダルに乗っている足の位置は、土踏まずまたは踵になっていませんか。ペダルに乗せるのは土踏まずより前のところ、足の指の付け根で、靴の底を見て一番幅が広くなっている部分をペダルにあわせるのが適正な位置です。
  また、適正な位置でペダルを踏むことは、ハンドルを切ったときの、つま先と前輪の接触をできる限り少なくすることができます。スポーツバイクは、BB位置から前輪軸までの距離フロントセンターが、軽快車より短めです。軽快車ではできる限り足のつま先が前輪に接触しないようにフロントセンターを長くしていますが、軽快車的なフロントセンター長さの設計では、スポーツライディングに向いた設計にすることが難しいこともあります。土踏まずでペダルを踏むことは、それだけつま先が前のほうになり、カーブでハンドルを切ったときに前輪と接触してしまう可能性が高くなります。もっともカーブでは、車体が傾くのでカーブの内側をペダルを上げて、カーブの外側をペダルを下げて走行したいものです。クランクを水平にしてハンドルを切ると、つま先が前輪と接触しやすくなり危険でもありますので、避けたいことです。

ペダルに乗せる足のポジション

  サドルを軽快車よりも高めに設定し、適正な足の位置をペダルに乗せる。これだけでも自転車に乗ったスタイルが綺麗に見えて、乗り慣れているっぽく見えます。街中での停止などが多い軽快車では安心を優先して、サドルが低めになるのは分かりますが、せめてペダルに乗せる足の位置だけでも変えたほうがいいと思います。こんなことを考え、乗り始めたらサドルが自動的に上昇し、停止時には下がるようなサドル・シートシステムを以前考えたことがありますが、構造が複雑になり実現が難しかったです。

ハンドルまでの距離

  このほかには、ハンドルがどのくらい遠いか(近いか)の要素になるトップチューブの長さなどもあります。一部バリバリのクロスカントリーMTBレーシングモデルで、凄くハンドルが遠いものがあったり、女性用と銘打ったハンドルをできる限り近いポジションに置いたモデルもあるのですが、一般に日本向けに設計されたフレームは、フレームサイズに応じて日本人向けにトップチューブの長さも設定されているはずです。どうしても遠いとか、近い場合は、サドルの組み付け位置を前後させたり、ハンドルステムを交換して突出長さの違ったハンドルステムに交換することで、自分にあったサドル~ハンドルの距離を設定できます。(MTBレーシング的志向では、フレームサイズよりもトップチューブ長さを優先してサイズ決定をすることがあるのですが、一般的なサイズ決定方式ではないので割愛します)   ハンドルまでの距離は、先ほどのサドル高さのように絶対にクリアーしなければならない条件はありません。使用用途・経験・好みなど乗車される方のキャラクターによって変るものなのです。まったく同じ体型をされた方が二人おられて、お一人はスポーツバイク暦も長いスポーティライディング志向の方、もう一人はスポーツバイクビギナーであったとします。体格は同じなのにサドル~ハンドルの距離は5cm以上も違うと思います。前者のほうが絶対にハンドル位置は遠いはずです。スポーツライディングするなら、上体の前傾姿勢がこのくらい、ひじの曲がり具合がこのくらい、などなどセオリーが存在しますが、大抵は少しエキスパートに準じたセオリーです。このセオリーにのっとって、最初からちょっと怖いと思う前傾姿勢をとらなくてもいいのです。まずは安心して乗れるポジションからはじめて、徐々にご自身に、使用目的に合ったポジションを模索する方法が、とっつきやすくていいと思うのです。それでハンドルを少し遠くにしたい、低くしたいといったときに、ハンドルステムの長さを換えるなどを試してみてはどうでしょうか。

ステムのよる位置調整比較

AHEADタイプのハンドルステムは、色々な突出長さ・角度の種類があり、ステムの交換で、ハンドル迄の距離や高さを変えることができます。 交錯して見難い図ですが、4種類のステムの一例を示しました。突出100mmでも角度が5度アップと25度アップでは距離が16mmほど縮まり、高さは18mmアップしています。突出60mm25度アップにすると、45mmハンドルまでの距離を短くすることができます。 詳細な寸法は、ステムの種類によって若干変わりますので、参考値としてください。またステムの交換は販売店でご相談ください。

男女での骨格の違い

  ハンドルまでの位置ですが、男性と女性では設定が変るようです。一般的に女性のほうが男性より小柄だから、あるいは女性はスポーツバイクに乗りなれていないから、などと言う女性蔑視的なことから、ハンドルの位置が近いほうがいいというのでもありません。男性と女性では骨格が異なり、身長に対しての脚長比が違ってきます。同じ身長なら女性のほうが脚が長いようです。つまり上半身が短くなります。また腕長比は逆に女性のほうが短くなります。上半身と腕が短いので、おのずとハンドルまでの距離が短いほうがフィットするわけです。
  最近は女性用ジオメトリー・スケルトン(フレーム設計)と銘打って、トップチューブが短い、ハンドルを近く設定したモデルも見かけるようになりました。普通にトップチューブを短く設計すると、フロントセンターも短くなります。スポーツバイクは軽快車に比べて、フロントセンターが短めですが、極端に短すぎるとハンドルを切った時につま先と前車輪が非常に接触しやすくなって乗車しにくくなり、ある程度以下は短くすることができません。したがって違った部分で調整して、トップチューブも短くしてフロントセンターを確保することになります。主な方法はヘッドアングルを寝かせて(小さくして)フォークオフセットを長くすることです。しかしフォークオフセットは、他のサイズと共通化したいところもあり、ヘッドアングルだけを小さくしていることが多いようです。ヘッドアングル・フォークオフセットは、自転車のハンドリング特性を決定付けるもので、あまり小さなアングル設定は、曲がりにくいマシンにもなりがちです。CR6(2007~2008年の26"ホイールモデルでした、現在ならCRA650に相当します)は、26インチホイールを採用して、フロントセンターも短くして無理なくトップチューブを詰めた設計にもなっているのです。
  洋服のウェスト、あるいは和服の帯の位置も、女性では男性より高めになっているのは、女性のほうが脚長比が長いと言うことからの、女性らしさを表しているのかもしれません。昔ジェンダーを強調していた儒教の関係からでしょうか、韓国のチョゴリなどはその最たるものでしょう。もっとも最近では*ローライズのジーンズも一般的になり、必ずしもそうともいえなくなりましたね。
  また男性・女性の違いだけでなく、人種によっても体型が異なります。単に西洋人は背が高いと言うだけでなく、先ほど述べた脚長比・腕長比も日本人と異なります。悔しいけれど彼らのほうがどちらも長い。したがって、欧米向けに設計されたフレームのフレームサイズやトップチューブも長くなって当然で、一般的な体型の日本人にフィットするのは難しい。騎馬民族であり長らく椅子の生活をしてきた彼らとは違って当然でもありますし、緯度が高いのもあるのでしょうか、北欧の人は特に背が高いようで、デンマーク・ラレーでは女性向けのロードスターでも、22インチ560mmという、びっくりするフレームサイズがワンサイズで用意されていたりします。
※他のコラムにも言えますが、元原稿が以前に書いたものになりますので、  ところどころにトレンドから外れてしまったコトバあることご容赦願います。

(2015/3/22追記)
股下長比率の追記

  「自分は平均ではない!!」と悲嘆される場合も考慮して以前は記述しませんでしたが、最近ではネットでも調べようと思えばわかります。以前にさまざま調査して、股下寸法の比率は身長の45%程度とつかんでおり、カタログの適正身長の幅もこの値を基準にして、それぞれの自転車に合った理想的なサドル高さを中心として範囲を設けていました。   この値より高いと「足長さん」と言えるし、低いと・・・となってしまいます。しかしあくまで平均であり、年代によっても異なりますし、男女でも異なります。また、比率が小さい場合はそれだけ胴にある内臓もしっかりとしていると言えるので、数値を見て一喜一憂するものではありません。著名な○○コレクションなどに登場するようなスーパーモデルさんの中には、60%の方もおられる模様。内臓関係はきっとすごくコンパクトなんでしょう。   経産省の調査機関で、工業製品設計のために股下だけでなく、身体のさまざまな部位の寸法を調査した結果が出ておりますが、やはり平均は45%強だったようです。ここで男性も女性もほぼ同じ45%強である結果から、股下長の伸長比率は男女で変わらないという論調もあります。しかし、女性の場合は平均身長も、当然男性より小さな値になります。一般的に身長が大きいほど股下長比率も高くなります。すなわち女性の場合は男性より小さな平均身長で、男性と同じ股下長比率を保っていることから、やはり男性よりも股下長比率は高いと言えます。

スローピングフレーム

  スローピングフレームのよさは、先ほど述べたように絶対的なサドルの高さを低くすることもできますし、サドルを高くセットしてもそれなりにスポーティです。ラレーで450mmあるいは460mmのサイズが多いのですが、日本人向に設計しなおしたもので、このサイズが平均的な日本人の身長を幅広くカバーするものです。サドルを限界まで上げなくても175cmくらいの平均的な体格の方なら十分に乗車可能範囲ですし、サドルを一杯に下げなくても155cmくらいあれば何とか乗れるサイズです。
  最後にちょっとだけ自慢っぽくなりますが、この「スローピングフレーム」、今では普通にいう言葉になりましたが、実はARAYAの登録商標でした。前述のようにスポーツバイク(スポーツ車)は、以前はトップチューブは水平であるべしと言う不問率がありました。さらに設計上は0.5度前下がりにすると、実車で水平に見えるという設計ノウハウもありました。どうしてもフレームサイズを小さくしたいときなどは、パッと見分からない程度にトップチューブを1~2度前上がりにする、あるいは邪道とはいいながらBBを高くする方法もとられました。しかしこれらは本格的なスポーツ車のエキスパートたちからは、パッと見「かっこ悪い」と片付けられているようでした。またBBを高くして無理やりサイズを小さくしても、サドルの地上高は前述のように低くなりません。
  1982年にMTBを発売し、その後オフロード走行と一般的な日本人の体型を考え、余裕あるスタンドオーバーハイト、あるいは状況に応じてサドルの上げ下げできる範囲を大きくとりたいということから、1987年に今までの常識を破って大胆にトップチューブを前上がりにしたMTBを出しました。しかし、当時は常識外れですから、安全パイとしてスローピングフレーム版のほかに、トップチューブ水平のホリゾンタルフレームと呼ばれるバージョンも用意していました。もっともその前にあったBMXではトップチューブ前上がりのフレームもあったので、発明とまでは行きません。  しかし、26インチと言うフルサイズでは初めてでもありました。当初はホリゾンタルフレームのほうが比率は高かったのですが、スローピングフレームのよさが理解され、スローピングの比率が高まり、現在のMTBでは当たり前になっているのはご存知のとおりです。また絶対的なフレームサイズのコンパクトさは、乗車可能範囲の幅も大きくなり、小柄な女性からも支持いただいたこともありました。スローピングフレーム、ホリゾンタルフレームは、キャッチとしてそのときのカタログコピーに使ったものですが、それを商標登録したのです。
  スローピングフレームのサイズの小ささを表現するために、カタログ撮影などではサドルを低く設定したくなりますが、商品撮影ではあえてサドルをポンと上げて撮影し、カメラマンから「BMXみたいだね」とも言われました。やはりスポーツ車ですから、ハンドルとサドルの高さのバランスがあります。ハンドルがサドルよりやたら高いとスポーティさがスポイルされるように思えたのです。あの時サドルを低く設定して撮影していたら、見た目のイメージで、スローピングフレームが普及するのがもう少し遅くなったかもしれません。スローピングフレームはMTBで支持されるようになってからも、ロードで支持されるのはそれから随分間をおいてからでした。自転車の見た目のバランス、既視感によるプロポーションでの自転車の美しさについては、それぞれ意見もあり難しいところがありますが、要は自分が乗りこなしている自分のマシンが一番美しいのではないでしょうか。また自転車はクルマと違って、実際に走っているときは、自転車のと同じかそれ以上のボリュームを持つライダーと一緒になっている姿になります。マン・マシン一体で美しく見せるには、乗りこなし、乗りなれるトレーニングも必要ですが、こちらはそれ以上に難しい。坂道でヒーコラ言っているときなどは、さぞかし無様なんだろうな、と思いながらも、「まっ、いいか。乗ることを楽しめば・・・」と自己弁護している今日この頃。進歩がありません。いやはや・・・。

サドル高 HI
サドル高 LOW

1987年カタログの中の1ページ。左はカタログで採用したサドル高さポジション、右はサドルをホリゾンタルフレームのセッティングくらいにサドルを下げたもの。サドルの低い右側は実際に使う分にはいいのですが、商品写真としてはサドルの上がった左側のほうがなんとなくスポーティに見えます。