2008/4/26
追記・変更:2010/5/1
2015/4/3 更新
例に挙げている自転車も、以前のモデルになっているのですが、書いている説明内容自体は現在もそれほど変わらないと思いますので、まずは元原稿をそのままアップしました。現在のモデルでの状況は末尾に追記で記載しました。
他本文内で例としてあげている各モデルのリンクは、本稿アップ当時の2008ラインナップモデルになっていましたが、2010ラインナップモデルにリンクを変更しました。
(2015/4/5)
現在は、ラレー流解釈による「クロスオーバー」というカテゴリーになっています。
「クロスオーバー」の説明を加えました。
クロスバイク。クロスカントリーなどを語源に思い浮かべてしまうのですが、クロスの語源はクロスオーバーになります。1980年代、主にアメリカではマウンテンバイクは黎明期から進化をし続け、しっかりとした車種のジャンルとファンを築いていきました。オフロードの走破性に優れたマウンテンバイク。しかし使用される実態は舗装路での使用が多くを占め、多くの方々にとってはマウンテンバイクはオーバースペックであったようです。マウンテンバイクはオフロード走行を考慮したブロックの大きいタイヤが装着されますが、舗装路ではこれが逆に走りの重さになってしまいます。ロードバイクは以前からあったのですが、やはり細いタイヤとドロップハンドルで普通の方にとっては、とっつくのに抵抗があります。そこでロードバイクとマウンテンバイクの良さを取り入れて混血させた自転車が考えが出てきました。
ARAYAマディフォックス1988年カタログよりクロスバイクの原型のモデルとも言えます
1980年後半、アメリカのある取引先に訪問したとき、そのような話が出てきました。彼らは昔のイタリアのALANのシクロクロスを参考として引っ張り出してきて、こんな自転車をベースにして何かできないかと言っていました。またまた、ちょっと自慢になってしまいますが、そんな状況も考え、1988年にはARAYAから早くもクロスバイクの一種を発売しています。マウンテンバイクより外径が大きくロードと同じ規格の700Cホイールにロードより少し太目のタイヤを装着し、MTBコンポの採用でワイドなギヤ比を獲得して、マウンテンバイクのようにフラットハンドルを採用しました。まだ日本ではマウンテンバイクが本格的なブームになる前のことです。今となればなんでもない自転車ですが、画期的なモデルであったと思います。確か当時では、他にはビアンキさんしかなかったように思います。
ロードとマウンテンバイクの混成と言うことから、クロスオーバーバイクあるいはハイブリッドバイクと呼ばれはじめ、日本では少し縮めてクロスバイクとなったようです。アメリカでは現在ハイブリッドバイクと呼ぶのが定着したようです。前述のARAYAの1988年モデルは、当時ではクロスオーバーと言う呼び名も無く、カタログでは「フィットネスオフローダー」などという、ワケの分からないコピーを流しています。ロードバイク(当時はロードレーサーと言う名前しかなかったですが)のドロップハンドルを、乗りやすくするため、フラットハンドルにしたモデルをフィットネスと名づけられていました。それのオフロード版と言うことでした。フィットネス・・・? 何のこと無い今で言うフラットバーロードと同じですね。フィットネスはブリヂストンさんが当時提唱されていました。これも時代ををかなり先取りしていましたね。
その後日本のクロスバイク、アメリカのハイブリッドは、それぞれ微細な違いではありますが、お国の違いも反映して、進化と発展、拡散を重ね現在に至っています。また欧州にも波及して、 欧州ではトレッキングバイクと呼ばれて、また少し違った形で存在しているようです。
以上が現在までの簡単な歴史なのですが、発祥が混成から生まれただけに、はっきりとしたキャラクターを持ち合わせないのも頷けます。またそらしい形ができてから20年位しか経過していません。
クロスバイクとは、冒頭の写真説明でもしましたように、ドロップハンドルとは違って乗りやすそうなハンドルを装備して、スポーツバイクの仕様でスペックされたスポーツバイク全般として、大雑把でしょうが差し支えは無いと思います。
さて、今までの説明ですとどっちつかずのような印象を与えてしまい、これはスポーツ用として使えるのか? あるいは初めてスポーツバイクに乗るのに適しているのか? という疑問が生まれます。最初からロードあるいはマウンテンバイク、もっと具体的にモデル名を決めて検討されている方は、その範囲でお選びになればいいのでしょうが、初めてスポーツバイクを乗ってみようかと思われた方にとっては、クロスバイクは十分に検討に値する自転車です。ドロップハンドルは、使いこなすと便利なものですが、やはり初めて乗るのには抵抗があります。またロードの細いタイヤは、路面の段差などを考えると怖い気がしますし、非常な高圧での空気圧管理などの問題もあり手ごわいです。多くのロードはある程度太いタイヤが履けるような寸法的余裕がありません。マウンテンバイクは舗装路使用がメインだとすると、やっぱりオーバースペック、つまり使用するのに重たい自転車になります。
検討に値すると申しましたのは、使用用途に合わせて下記に示すような色々な種類から選んでもらうことできることも大きな理由です。もっともこれだけ色々な顔があるだけに、はっきりしたキャラクターが無いといえるのかも知れませんね。
少し太めの700Cタイヤを装着して、MTB系のコンポを採用。幅広いギヤ比を有して、急な上り坂にも対応します。街乗りに便利なフェンダー(ドロヨケ)やスタンドが標準装備されていたりします。フロントにサスペンションを装備しているモデルも多いのですが、オフロードを走るためのものでなく、路面の段差などのショックを和らげるものとして採用され、快適性を重視した方向での装備となっています。初めて乗るには、もっともとっつきやすく、初めて乗ってもそれほど違和感無く乗っていただけると思います。そのためにハンドルの高さは比較的高めにセットされていて、大きな前傾姿勢を強いられずにすみます。街中での使用から、少し足を伸ばしたサイクリングにも十分使用できます。
上段がMRC、下はBDCです。MRCはママチャリっぽいデザインなのですが、実はしっかりとスポーツバイクスペックのクロスバイクなのです。
(2015/4/5追記)現在のラインナップには上記はありません。
問題として、街中使用で便利なアイテムを装備していて、重量が若干あること(それでも軽快車<ママチャリ>よりはるかに軽量です)。あくまでスポーツ車をベースとしていますので、軽快車の感覚で接すると不便なところがあること。たとえばフロントセンターが軽快車より短く、土踏まずでペダルを踏むと前輪とつま先が曲がるときに接触したり、ドロヨケやスタンドが軽快車のような鋼製で無く軽量なアルミや樹脂のため、鋼製ほどの強度がないこと、買い物の荷物を積むためのカゴなどが無く、別途お店でオプションで選ばなければならないなどのです。
街中で便利なアイテムは最初から装備されず、ロードバイクのようにスポーティなデザインのものです。しかしロードよりははるかにワイドなギヤ比を持っていて、非常に軽いギヤ比を選べたり、扱いやすくメンテナンスもしやすいMTB系のコンポで組まれていたりします。フェンダーや、スタンドはオプションで取り付けることは可能ですが、ドロヨケなどは細身のもので若干扱いがデリケートになります。乗車ポジションは前述の代表的クロスバイクより若干前傾姿勢になりますが、これはスポーツ走行を考慮したものです。それでもロードほど前傾にはならないでしょう。
カーボンフォークを採用しスポーティなデザインのRFS。コンポーネントはMTB系を採用してギヤ比もワイドで、扱いやすさも考慮されています。RFLは仕様的には前述の代表的クロス近いのですが、スポーティな雰囲気も楽しめる欲張りなモデルになります。
別名フラットバーロードと呼んでいるもので、名前も長ったらしく分かりにくいこともあるので、これらも含めてクロスバイクと呼んでいる場合が多いです。ロードのドロップハンドルをフラットバーに置き換えたような非常にスポーティなクロスバイクです。ロードバイクのハンドルだけ置き換えたものもありますが、フレームを専用設計しているものもあります。ラレーRF7はRF7専用設計で、ロードでは装着が難しい700×28Cタイヤも装着が可能になっています。
コンポはロード用コンポをベースにしているものも多く、少しの部品変更でドロップハンドルのロードバイクへのカスタマイズも可能です。MTB系コンポですとドロップハンドルへの換装に多くの部品交換を要するため困難です。将来ロードも視野に入れられている場合は、このようなモデルを選ばれるのもいいでしょう。
今まで紹介したタイプは、現在主流のアルミフレームのものが多いのですが、細身のクロモリフレームで、個性的なデザインでまとめたものも存在します。たとえばラレーCLBはクラシックなデザインを楽しめますし、ラレーTRS、TRMは、クロモリフレームと細めの26インチタイヤのスリム&コンパクトなシティユースモデルです。このジャンルは、クロスバイクのカテゴリーになるのかどうかというご意見もありますが、前述のように非常に幅広い意味合いを含んでいるとすれば、クロスバイクというジャンルで括ったほうが分かりやすいと思うのですがどうでしょうか。
下段よりクラシックデザインのCLB、コンパクト&スリムのTRS、TRSのミキストフレームタイプTRM。いずれも個性的なデザインも楽しんでいただけるモデルになっています。
今軽快車に非常に近いものですが、スポーツバイクの機能を備えているものです。ラレーMR6やTRE(現在ラインナップにありません)などは26インチホイールとコンパクトなフレームサイズで、気軽にお乗りいただくことができます。
そのほか外装ママチャリと呼ばれるもので、軽快車に外装変速機を採用したものも、このジャンルに入るのかもしれませんが、ここまでになると設計ベースや基本部品仕様は軽快車であり、ちょっとスポーツバイクとは呼べなくなってきます。
しっかりとしたチェーンケースまで装備したMR6。非常にママチャリっぽいのですが、アルミフレームに、ちゃんと変速機やVブレーキ、QRハブなどスポーツバイクとしての機能を備えたモデルです。
ママチャリ的に使用する、つまり近所を走る、あるいは買い物に使うには便利でしょうが、重量の点、設計上の点でスポーツ走行や足を伸ばしたサイクリングに使うにはちょっとつらくなってきます。また非常にお求め安い価格で「クロスバイク」と称して販売されている廉価モデルも存在します。見た目はクロスバイクっぽいのですが、フレームやひとつひとつの部品がやはりそれなりになってきます。よく分からない場合は専門店さんで十分にご相談されてお求めになる方が、結局いい買い物になると思います。
車種カテゴリーの名称は、拘ればキリがなく薀蓄もたくさん存在するようです。たとえば一般的にラレーCLSをスポルティーフなどと呼んでいますが、これはスポルティーフではないというご意見も確かに存在します。もっと詳しい車種名についての説明などは、色々なサイトにアップされているようですので、興味のある方は検索などしてご覧ください。
詳しく語ると際限がなくなるのですが、現在のスポーツバイクを分かりやすく括るとするならば、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイクの3種そして加えて小径ホイールを装着した小径車あるいはミニベロがあるとしてもいいのではないかと思います。
ランドナーや、スポルティーフなどと言った車種は、クロスバイク登場のずっと以前から存在しました。しかし上で少し触れましたように難しいイメージもあり、初めて接触するにはハードルが高いものでした。もっと一般的なスポーツ車もありましたが、ドロップハンドルが装着されていてやっぱり抵抗がありましたし、ドロップハンドル以外のスポーツ車は、ターゲットが少年向けに作られたものが多かったようです。現在はクロスバイクが充実し、初めてスポーツバイクに接するにも選択の範囲が広がっていい環境になったと思います。
昭和レトロブームの影響かどうなのかは分からないのですが、昭和時代のマスプロスポーツ車をオークションなどで見つけられて入手される方がおられるようです。若い女性もちらほらでファッション的な小さな流行のようでもあります。確かに独特の風合いがありレトロ感を味わうのにはいいのですが、残念ながら装着されている部品は、現在のスポーツバイクコンポとの互換性がまったくといっていいほどありません。レストアするにはかなりの知識と困難な部品入手というハードルが控えていますので、よく分からない場合はあまり手を出さないほうがいいと思います。
また違う方向へ話が行きそうです。以上クロスバイクの選択のご参考になれば幸いです。
上記は、2010年モデルくらいまでを例に挙げて、説明を行っております。「変わらないこと、進化すること」を標榜するラレーですが、さすがに現在のモデルは変わっており、例に挙げたモデルの中には、現在発売されていないものもあります。しかし、クロスバイクの顔の分類については、それほど大きく変わっていませんので、そのままアップすることにしました。
現在、ラレーではカタログにも書いていますように、「クロスオーバー」というカテゴリーを置いています。クロスバイクは、その後さらに普遍化し、ロードにおいても同様です。スポーツバイクに対する認識は、大きく向上したと思います。クロスバイクにもロードのようなスポーティさ、高速走行性能を求められる傾向も強く、ロードとクロスバイクのクロスオーバーとしたわけです。
ロードコンポをフルに装備するRF7、RFCだけでなく、RFLも全面的に設計変更して追求をしました。
「個性的な…」で括られる、CLB、TM7は「変わらないこと」を地で行く、ラレー・クラシックモデルで、モデルチェンジした部品・コンポはともかく、変わらず継続中です。
アラヤブランドになりますが、シクロクロスの定着化も受けて、1988年CXオリジナルのコンセプトを継承したCXで2014モデルより全面的に変更になりました。フレーム設計、部品仕様はシクロクロスそのものであり、これは上に示したクロスバイクの顔の中では、「クロスバイクことはじめ」になってしまうのでしょうか。
別項の「自転車の華 変速 (追記編)」では、目まぐるしく変化する変速関係の環境変化を説明しましたが、時代を繰り返すこともあり、自分のところの製品でありながら、興味深い事でもあると思いました。