Column

スポーツバイクの華 変速機

2006/5/13
2015/4/3 更新

(2015/4/4)
追記

  コラム末節で、「今まで色々な機構が発明・提案されてきたところ・・・」と書いています。そこのコラムをアップしたのが2006年で、実際にその後様々状況も変わりました。2010で追記した個所がありますが、それもまた変わってきているところもあります。
  また、十分な説明がなかったコンパクトドライブや、他変遷などを追記していたら、結構な分量になってしまったので、別コラムでアップします。 「スポーツバイクの華 変速機 (追記編)」をご参照ください

(2010/5/1)
例としてあげている製品について追記しました

本稿は2006年の記述で、例に挙げている製品は既に生産を終了したものもありますので、現行の2010ラインナップの製品の例も追記いたしました。

変速機でスピードアップ?

  「5段変速ぅっ!!、5倍もスピードが出る自転車に乗って、お前は不良になりたいのかぁ!」などと言われて、変速の付いた自転車が学校で通学用に禁止されることがありました。随分昔の話です。「そんな馬鹿な」と思われる方、ふっ、ふっ、ふっとニンマリされる方。もちろん5倍もスピードが出るなんて思っておられる方は今はおられないのでしょうが、これが真剣に思われていた時代もあったのです。   変速、確かに語から言えば、「速度が変ること=スピードアップ」にイメージします。ギヤ比を変えるこのシステムを、変速機と和訳した罪は大きいですね。

黄金のギヤ比

  32T×14T。前ギヤが32枚、後ギヤが14枚で、これは黄金ギヤ比です。またもや軽快車の話になり恐縮ですが、軽快車は自転車のスタンダードです。標準ということは、万人向ということで、やはり譲れない基準が確立されていると思うのです。もっとも日本の自転車のスタンダードは、もともと実用車でした。ラレーが深くかかわっているのですが、今後に譲ります(別項「ミニベロへの賛歌」で記しています)。ここでTというアルファベットがありますが、Teeth(歯)ということです。ギヤの歯数を言っているのすね。自転車業界では歯数48枚だと四十八丁(ちょう)と言ったりします。これって、誰かが「T」を「丁」と誤植したことから始まったのかな。それでも違和感なく意味も通るし語感もいいです。誤植としたら天才的、あるいは確信犯?
  前が32Tで後が14T。クランクを1回転すると32÷14=約2.3ですから、後の車輪が2.3回転することになります。これがギヤ比になります。これはあくまで車輪の回転だけを言っていますので、力の関係から行きますと、自転車のマシン全体のものにはなりません。2.3回転するといっても、車輪径が小さいと進む距離は少ないですし、大きいとそれだけ進む距離も大きくなります。ギヤ比だけでなく、進む距離で表すほうが分かりやすくなります。それでも、軽快車は一般に24インチから27インチまでありますが、大体は32T×14Tが多いようです。24インチは、27インチに比べて進む距離が少ないですが、それだけ低速向けの位置付けからくるのでしょう。また車輪径が小さくなると、マシン効率も落ちてきますので、大きい車輪径の場合と同じ進む距離のギヤ比で設定すると、漕いだときに重くなります。32T×14Tが黄金の組み合わせになったのも結構最近で、昔は38T×16Tあるいは44T×18T、その昔は48T×20Tでした。どれも割り算をすると、ほとんど同じギヤ比になりますね。(ギヤ比の計算では、前ギヤ÷後ギヤですが、ギヤ比を表すのにはまったく反対の計算記号「×」を使います。以下、普通に使う「×」に統一します。)
  今では、後ハブ(車輪の軸部の部品です)に後のギヤ(フリーホイール)が一体化したのが普通になりましたが、以前は後ハブとフリーホイールが別物で、フリーホイールを後ハブにネジ込んで組付けるのが一般的でした。別物なので、後のギヤもあまり小さなものはできません。20Tが普通だったのが、18Tもでき、16Tもできましたが、それ以下は寸法上どうしても無理でしたが、一体化することにより、14Tも可能になったのです。(しかし、ネジ込みのネジ外径を小さくして14Tにしたミニフリーというものも過渡期にはありました)。また昔は前のギヤが大きいほうが立派に見えたこともあります。昔の実用車は大きいチェーンケースが付いているのも、このように大きな前ギヤが付いていたこともあったのです。今では、コンパクトにまとまったチェーンケースのほうが、軽快車では人気があり、32Tになったようです(場合によって33Tや34Tもありますが、主にフレームの設計上、少しギヤ歯数を変える必要があって33Tや34Tが採用されたります)。少し前、さらにコンパクト化を考えて、フリーハブの利点を生かして後11Tのものもでき、前ギヤを26~28Tにするという、コンパクトドライブ「CD」が、軽快車コンポでありました。今ロードでコンパクトドライブがもてはやされてますが、こんなところにネーミングの元祖がありましたね。しかし少々コンパクトすぎたようで、今ではあまり見ることができません。
  フリーホイールがハブと一体化したものをフリーハブといいます。いわゆる著名な日本の総合パーツメーカーさんが考えたものですが、これがあったからこそ、現在のスポーツバイクでの8段、9段、10段ができたのであり、昔は難しかったカチカチと位置が決まった変速ができるようにもなったのです。フリーハブは現在のスポーツバイクコンポーネントに続く大きな発明でもありました。

変速機でスピードアップ?
ギア名称イメージ

リヤの場合、トップの次をセカンド、次がサードギヤといいますが、クルマを考えると、低いギヤ(低速ギヤ)側から、ロー、セカンド、サードですから、自転車でのこの呼び方は逆になります。ですから、クルマ風の言い方をする方もおられます。どちらが正しいとは一概に言ませんが、トップから2枚目、3枚目といったほうが、伝え方に間違いがないように思います。

  さて、スポーツバイクのパーツの中でも、もっともスポーツバイクらしいメカニズムである変速機(変速器という言い方やディレーラー、メカ、あるいはシフティングシステムなどという英語風の洒落た言い方もありますが、ここでは変速機に統一します)です。変速機により、色々なギヤ比をチョイスできるシステムです。これは、走る条件によってギヤ比を選んで、いつも適正なギヤ比で走れるようにしてくれるのです。坂道ではペダルを踏む力が軽いほうがいいですし、速く走るには漕ぐのが重いけれども車輪がたくさん回る方が有利です(もっとも重いギヤ比が、イコール速く走るためのギヤ比ではありません。車の場合はそうなのでしょうが、絶対に計算どおりにならないところが、人間がエンジンである最たるところでしょう)。
  そのギヤ比の選択が、乗ったままレバー操作でできる事なのですが、今では主にハンドルのグリップ部分に付いたレバーでカチカチと変速できるのが当たり前になりましたが、以前はフレームに付いたレバーで行いましたから、ハンドルから手を離さないとできませんし、レバーもカチカチというのでなく、ニュルニュルといった感じで、変速の位置も感触でアタリを決めなければならないというテクニックが必要でした。また変速のときは、必ずペダルを踏み込む力を緩めなければうまく変速せず、さもなくばガラガラガッシャンとチェーンが外れることになりました。
  変速機は海の向こうではDerailleurと言います。フランス語のようで、英語圏の人でもまともにスペルがかけない単語のひとつです。de-railで脱線ですから、脱線機という意味です。確かにチェーンがギヤからギヤへ脱線してますね。ギヤからギヤへ無理やりチェーンの位置を架け替えるのですから、一瞬チェンに横方向へ大きな無理な力がかかります。今では、変速効率も良くなり、チェーンの強度が向上しましたので、登坂で大きな力で漕いでいるときも変速は可能ですが、やはりペダルにかける力を抜いてから変速したほうがチェーンの寿命から言っても絶対にいいです。早め早めの変速がセオリーなのですが、坂道でヒーヒー言っているときは、それどころでないのもよーく分かりますけどもね。
  ここで、もうひとつ少しアドバイスなのですが、今までスポーツバイクに馴染みの無かった方も、クロスバイク、マウンテンバイク、あるいは一気にロードバイクに乗られる方が増てきているのは、大変うれしいことですが、当然これらには変速機が付いていて、たくさんのギヤの組み合わせからギヤ比を選んでもらえることができます。街角で見ると、たいていは、前は外側の大きなギヤ(アウターギヤ)にかかっていて、後は同じく一番外側の小さなギヤ(トップギヤ)にかかっていることが多いようです。前も後も外側で外側ですから、チェーンのかかり方もスムーズなラインで、一番素直なかかり方に見えます。ラレーのカタログだけでなく、他社さんのカタログを見ても、商品写真として写っているのは、ほとんどこのチェーンのかかり方です。少し考えても分かりますが、この位置は一番重いギヤ比になります。すなわち一番速く走るためのギヤ比です。たとえばラレーのBDC(BROADMARSH CLASSIC)で言いますと、前アウターギヤは42T、後トップギヤは11Tで、ギヤ比は42÷11=3.82になり、黄金ギヤ比からすると、1.7倍にもなり非常に大きいギヤ比になることになります。言い換えれば、高速ではいいのかもしれませんが、普通に街中を走るには非常にペダルを踏む力が重いギヤ比でもあるのです。
  沢山のギヤ比を選べるスポーツバイクですから、同様にBDCの一番小さなギヤ比は、前のギヤをもっとも内側の小さなギヤ(インナーギヤ)と、後は一番大きなギヤ(ローギヤ)にしますと、前が22T、後が30Tで、22÷30=0.733となり、同様に黄金ギヤ比からすると、0.32倍、3分の1のペダルの軽さで踏めることになるのです。これだと急な上り坂でも全然問題なく乗っていけそうです。しかし現実にはちょっと難しいところもあります。自転車は、二輪の不安定な乗り物ですが、ある程度のスピードを出すことで、非常に安定し、二輪のために路面抵抗も少なく軽快に走れます。スピードが遅くなると当然安定性がなくなります。だから停止した状態で、立ったままいられると「わー、スタンディング!!」と拍手をもらえるわけです。小さいギヤ比ということはスピードが出ませんし、実際に使われるときは登坂です。極端にスピードが落ちるほとんどスタンディング状態、登坂という平坦な場所ではないのでさらに安定性が減少します。したがって極端な低いギヤ比で急な上り坂を登るのは、実は凄くテクニックがいります。案外あきらめて自転車を押すほうが得策かもしれません。
  軽いギヤ比はともかくとして、問題は重いほうです。スポーツバイクにはじめて乗ってみて、ちょっと速く走れるのはさすがと思うけど、なんだかその分漕ぐのが重いと思っている方も多いのではないでしょうか。おそらく一番の問題はこのギヤ比のチョイスによるものだと思うのです。
後のギヤチェンジは比較的簡単ですが、前はちょっと気合がいりますね。これは後に比べて、前はギヤとギヤの歯数差が大きく変速ショックが後に比べて大きいこと、変速の方法が後の変速システムに比べて前はダイレクトでなく、変速効率が落ちるためです。変速ショックが少し大きく、若干テクニックもいるので、どうしても前の変速は億劫になるのは良く分かります。したがっていつも前は一番外側の大きなギヤに入りっぱなしになるのでしょう。しかしここでちょっと考えを変えて、普通に街中で乗るには、前のギヤはいつも真中のセンターギヤに 入れっぱなしにして、あとは後ギヤだけを変速するという方法をお勧めしたいです。同様にBDCでは、前の真中のギヤ(センターギヤ)は32T、後トップギヤに入れると11Tですから、32÷11=2.91。これでも黄金ギヤ比より1.3倍ほど速いギヤ比になります。ローギヤだと32÷30=1.07で黄金ギヤ比より46%の軽いギヤ比になります。後述する内装3段ギヤの軽いギヤよりもはるかに軽いです。たいていの坂でも大丈夫です。また前のセンターギヤは、チェーンラインという位置に相当し、チェーンのかかり方が一番素直な位置です。後述するように、後だけの変速での問題も少ないです。チェーンの位置から言っても、使い方にしても、普通に乗るには一番使いやすいギヤと思うのです。一番外側のアウターギヤは、休日の遠出のサイクリングなどで、高速で走り続けるときなどに使ったり、インナーギヤは、いよいよどうしようもないきつい上り坂で使ったりして、前ギヤ3枚のトリプルギヤは複雑で馴染みにくいメカニズムなのですが、こうして考えるととても理想的なギヤシステムだと思うのですがどうでしょうか。
  申し上げたいことは、必要以上に重いギヤを使わないことです。重いギヤは速く走れそうに思いがちですが、前述しましたようにそこは生身の体、エンジンのようには行きません。また必要以上に重いギヤは膝を痛めたりしていいことはありません。むしろ軽いギヤで回転で稼いだほうが、速く走れることもあるのです。もっとも、私などは時折出る草レースで、いつもチームメートに「○○さん、やっぱりギヤが重いですよ。」といつも注意されます。速く走ろうと考え、やっぱり重いギヤを踏みたくなりますね。以前通勤用軽快車に、前を50T、後を前述のCD用11Tギヤにして、これで駅までが5分短縮できると思いましたが、結局却って遅くなってしまったことがありました。前50T×後14T、ギヤ比4.55にもなり、黄金ギヤ比の約2倍です。これはあまりにも無茶でした。
(上の写真の説明で、クルマと逆と言いましたが、変速のシフトアップ・ダウンも逆に言われることが多いようです。クルマでは、低速用のギヤに替えることをシフトダウン言いますが、自転車のリヤギヤの場合見た目で、小さいギヤに変えることをシフトダウンといってしまう場合が多いようです。しかし、リヤで小さいギヤにすることは、高速用のギヤになるので、シフトアップになります。こちらはクルマの言い方のほうに分があるようです。)

(2015/4/4)
追記など

  以前までアップしてた内容では、ギヤ比の例として2010年頃まで発売していたBDC等を上げていましたが、生産終了をして久しくなりました。このコラムは追記更新する場合でも、極力アップした時の内容を残すようにしていますが、現在において上記を例として上げるのも現実的ではないので、現在のモデルでの例に書き換えています。

変速ギヤ比

  先ほど変速するのは、やはり後中心なのは理解できるといいましたが、後だけの変速は問題が生じることがあります。たとえば前をアウターギヤにかけて、後をローギヤ、あるいは前インナーギヤで、後トップギヤの場合は、一番チェーンが斜めにかかってしまう状態です。このようなチェーンが極端にねじれた状態で使用することは避けたい事です。チェーンは本来一直線上に並んでいるギヤとギヤの力の伝達に使うものです。チェーンが斜めにかかって使用するのはおそらく自転車くらいではないでしょうか。そのため自転車変速用チェーンは斜めになってもしっかりと伝達できるよう、他の機械用チェーンとはまったく違った特殊な構造になっているのです。しかし特殊といってもやはり無理なかかり方は避けたに越したことはありません。前がセンターギヤの場合はいいのですが、前がアウターギヤの場合は、後が大きいギヤに残り2~3枚になったときは、それ以上変速する際、前をセンターギヤにして、後を再度小さなトップよりのギヤに変速するという変速テクニックを使ったほうがいいのです。また、そのくらいからギヤ比もセンターギヤとの組み合わせとオーバーラップするようにもなってくるのです。下記に一例としてRFLのギヤ比の一覧を示します。

フロントギヤ リ ヤ ギ ヤ
11T 13T 15T 18T 21T 24T 28T 32T
48T 4.36 3.69 3.20 2.67 2.29 2.00 1.71 1.50
38T 3.45 2.92 2.53 2.11 1.81 1.58 1.36 1.19
28T 2.55 2.15 1.87 1.56 1.33 1.17 1.00 0.88

  表をご覧いただくと、アウターギヤ48Tとリヤ3枚目の15Tで、すでにセンターギヤ32Tとリヤトップ11Tよりもギヤ比が小さくなっているのをお分かりいただけるでしょう。アウターギヤ48Tでリヤ24Tくらいまで変速されて、さらに次の28Tにするのなら(これで48Tと28Tでギヤ比1.71)、センターギヤ38Tに落として、リヤを21Tに戻されても(38Tと21Tでギヤ比1.81)ほとんど変りません。チェーンが大きくねじれるのが防げますし、センター32Tで次はさらにリヤを変速させることで、より軽いギヤ比が選択できることになります。 このように、前3段、後8段だと組み合わせで、3×8=24段になるのですが、実際には使うべきでないチェーンを架けるギヤ組み合わせがあったり、ギヤ比がオーバーラップしてしまうところもあり、正確には24段ではありません。したがって24段といわずに3×8段という表現をしているのです。

変速ギヤ比

  今までは、ギヤ比だけの比較をしてきました。これはあくまでクランク1回転で後車輪が何回転するかを比較しているだけで、自転車によって車輪径が異なりますので、自転車全体として捕らえると正確ではありません。本来はクランク1回転でどのくらい進むかを比較したほうが本来のギヤ比になります。   RFLの場合、タイヤのエアの入れ方にもよりますが、タイヤの直径は約690mmです。車輪1回転で直径690×3.14=2167mm。おおよそ2.17m進みます。また、比較として20インチのRSMをみますと、タイヤ外径520mmで、一回転で、520×3.14=1633mm。おおよそ1.63m進みます。 RSMはフロントがシングルでリヤ8段です。ギヤ比としては下記になります。フロントに52Tが採用されていて、ギヤ比としては高めです。

RSMギヤレシオ
フロントギヤ リ ヤ ギ ヤ
11T 13T 15T 18T 21T 24T 28T 32T
52T 4.73 4.00 3.47 3.06 2.60 2.26 2.00 1.53

また、今度はRFLとRSMでクランク1回転で進む距離を比較してみましょう。各々ギヤ比に車輪1回転で進む距離をかけています。なおクランク1回転で進む距離をGD(Gear Development)とも表現することが多いです。

RFL クランク1回転で進む距離(m)
フロントギヤ リ ヤ ギ ヤ
11T 13T 15T 18T 21T 24T 28T 32T
48T 9.46 8.00 6.94 5.78 4.95 4.34 3.72 3.35
38T 7.49 6.34 5.49 4.58 3.92 3.43 2.94 2.57
28T 5.52 4.67 4.05 3.37 2.89 2.53 2.17 1.90

RSM クランク1回転で進む距離(m)
フロントギヤ リ ヤ ギ ヤ
11T 13T 15T 18T 21T 24T 28T 32T
52T 7.72 6.53 5.66 5.00 4.25 3.69 3.27 2.50

  表で比較するとRSMはギヤ比としては大きめでしたが、クランク1回転で進む距離は、RFLの範囲の大半をほぼカバーしているのをお分かりいただけると思います。

ロードのギヤ比について

  今までクロスバイクRFLを例にとって説明しましたが、ロードになるとギヤ比は全体的に高めです。これはやはり高速走行を主に考えられているためでもあります。たとえばCRT(2009年以前のモデルです)では前アウター×後トップで、53T×12Tギヤ比4.12でかなり高いギヤ比です。一番軽いのでも39T×25Tギヤ比1.56です。レースでは、より速く走ることが求められますから、下り坂でもペダルを止めてのんびり下るのでなく、下り坂でもペダルを漕いで走る場合が多いです。このとき軽いギヤ比では空回りするようになってしまいます。ロードでの大きいギヤ比は平坦追い風や下り坂など、さらに大きいギヤ比を必要とするときのものなのです。もちろん慣れない場合は、下り坂で無用なスピードを出されないことを絶対にお勧めします。次に控えた曲がりコーナーで、思ったラインを描いて曲がれず、非常に危険な状態になります。また低いギヤ比は1.56で、クロスバイクと比べるとかなり高めですが、随分昔ランドナーと呼ばれるツーリング車で一番軽いギヤ比が前インナー36T×後ローギヤ24T、ギヤ比1.50が普通だったことを考えると、決して高すぎることも無いと思います。もっともそんな昔と比較しても仕方ないですけどもね。
  ロードでは、後ギヤでギヤとギヤの歯数差が小さくなっています。歯数差が少ないとそれだけ変速時のショックも少なく、変速がスムーズであるだけでなく、レースでは状況に応じて、より細かなギヤ比の選定が必要なためです。後が3段、4段、5段から、6、7、8、9段、そして現在10段まで進化したのは、もちろんより幅広いギヤ比を得ることも目的としてありましたが、ギヤとギヤの歯数差を小さくする意味もあったのです。確かに10段といっても9段とトップとローのギヤ歯数差は大きく変っておらず、隣り合ったギヤの歯数差が小さくなっているだけが多いようです。

(2010/5/1)ロードのギヤ比について

  CRTをはじめ2010以降ラインナップでは、コンパクトドライブと呼ばれるフロントチェーンホイールが装着され、50-34Tのダブルギヤで、リヤは11-25Tが採用されています。したがってトップギヤは50×11Tで4.55、ローギヤは34×25で1.36になり、上記の53-39×12-25より、トップ~ローギヤの範囲が広くなって、さらにさまざまなコースに対応するようになりました。   トップ11Tまでは、必要ないのではないか、12Tでもいいのではないか、とのご意見もありますし、前述してますように高すぎるギヤ比はあまり使うべきではありません。しかし、11Tはいつも使うことでなく、見通しのよい長い下り坂などで踏めるギヤとして取っておくのも、レース用としては悪くありません。それでこそ9段、10段と非常に多段化した意味合いがあると思います。 また、9段、10段の多段化により、トップギヤがフレームのエンドに非常に接近してきています。さらにロードでは、シートステーの幅をできるだけ狭くするのがデザイン的にも好まれます。この状況で、リヤのトップギヤにチェーンをかけたとき、フレームとの隙間が非常に少なくなっており、11Tでは問題ないとしても、大きなトップギヤに交換するとチェーンがシートステーに接触する可能性があります。溶接のかかる部分でもあり、コンマ何ミリの制御ができない箇所ですので、フレームにより個体差も生じますが、トップギヤの交換可能なのは12Tまでとご認識いただきたく思います。

内装変速
(2015/4/4)
現在は内装変速仕様のモデルは存在しませんが本コラムアップ当時の記事を上げておきます

  最後に内装変速について触れてみたいと思います。今まで述べていたチェーンを架け替えする変速を外装変速というのに対して、チェーンの架け替え装置が無くて、車輪軸部内で変速するのを内装変速といいます。コンポーネントのネーミングでは、カッコ良く、インター8(エイト)、インター3(スリー)と呼ばれています。インターナル、「内蔵した」という意味ですね。ラレーのモデルではRF8(RADFORD-8)に内装8段、CLM(CLUBMAN)に内装3段が採用されています。外装変速との大きな違いは、後ギヤの下側に変速機がぶら下がっていません。パッと見、変速機が無い自転車に見えて非常にシンプルなデザインが魅力です。また、外装変速は走っている間しか変速できませんが、内装では停止した状態でも変速できます。たとえば信号待ちで停車中に軽いギヤに変速しておいて、発信するときは軽いギヤで走り始めることができます。また、変速を脱線と訳される言いましたが、ギヤでチェーンの架け替えが無いので、変速によるチェーン外れなどトラブルが少ないメリットもあります。しかし、変速でチェーンがギヤから外れるというトラブルは、メンテナンスさえしっかりしていれば起こりませんし、以前に比べればこのトラブルは非常に少なくなりました。チェーンが外れて困っている彼女を助けてあげることは、昔のドラマでしか見られなくなってしまったのは残念ですね。デメリットとしては、構造上クイックレリーズと呼ばれる、レバーによるホイールの脱着ができないことでしょう。 チェーンの架け替えはありませんが、内装変速では、後のギヤの回転と、実際の車輪の回転を変えることにより変速を行っているのです。車輪軸中心のギヤ部分は1回転しても、車輪は1回転以上したり、1回転以下であったりします。それをするために車輪軸部分のハブと呼ばれる胴部分内部に沢山の遊星ギヤと呼ばれるものが内蔵されているのです。ですからハブ胴体はずんぐりとしています。 その回転差(ギヤ増減速比)ですが、8段、3段は下記のようになります。

内装8段 ギヤ増減比
インジケーター表示 1 2 3 4 5 6 7 8
内装ギヤ増減速比 0.527 0.644 0.748 0.851 1.000 1.223 1.419 1.615
内装3段 ギヤ増減比
インジケーター表示 1 2 3
内装ギヤ増減速比 0.733 1.000 1.360          

  上の表で、内装8段の場合、トップ(インジケータで8と書かれている位置)では、後ギヤ1回転で車輪は1.615回転します。ロー(インジケータで1)では、0.527回転しかしないのです。RF8では、前44T×後18Tを採用していますから、標準のギヤ比44÷18=2.44になり、トップではさらに1.615増速しますから、トップでは、2.44×1.615=3.95がトップのギヤ比に相当するわけです。同様に計算すると内装変速の実質上のギヤ比は下記のようになります。上の表では、インジケータの数字の順、つまりローギヤ側から書きましたが、比較しやすいように、外装変速と同じトップ側から書き換えます。

RF8 ギヤ比 クランク1回転で進む距離(GD値)
フロント44T リヤ 18T
インジケーター表示 8 7 6 5 4 3 2 1
内装ギヤ増減速比 1.615 1.419 1.223 1.000 0.851 0.748 0.644 0.527
実ギヤ比 3.95 3.47 2.99 2.44 2.08 1.83 1.57 1.29
内装ギヤ増減速比 8.47 7.41 6.38 5.22 4.44 3.90 3.36 2.75
CLM ギヤ比 クランク1回転で進む距離(GD値)
フロント38T リヤ 16T
インジケーター表示 3 2 1
内装ギヤ増減速比 1.360 1.000 0.733          
実ギヤ比 3.23 2.30 1.74          
内装ギヤ増減速比 7.00 5.15 3.77          

内装と言っても、8段の場合はRFLの8×3段の変速範囲をほぼカバーしてくれているのがお分かりいただけると思います。内装3段ではさすがにカバーする範囲が少なくなりますが、それでも普通に軽いサイクリング程度なら十分に使えそうですね。

インジケータ
(2010/5/1)
2010ラインナップの内装変速モデルについて追記しました

前述の2006ランナップのRF8、CLMは、2010ラインナップ現在では、生産を終了しています。インター3採用のモデルはありませんが、インター8は2010TRSに採用されています。RF8からはホイールサイズが700×28C→26×1.15に変わっていますが、ギヤ比も見直しされ(44×18T → 44×16T)、クランク1回転で進む距離の調整もなされています。

ギヤ比・クランク1回転で進む距離
上段:2010 TRS
(下段:2006 RF8)
フロント44T リヤ 16T
(リヤ 18T)
インジケーター表示 8 7 6 5 4 3 2 1
内装ギヤ増減速比 1.615 1.419 1.223 1.000 0.851 0.748 0.644 0.527
実ギヤ比 4.44
(3.95)
3.90
(3.47)
3.36
(2.99)
(2.75)
2.44
2.34
(2.08)
2.06
(1.83)
1.77
(1.57)
1.45
(1.29)
内装ギヤ増減速比 8.69
(8.47)
7.64
(7.41)
6.58
(6.38)
5.38
(5.22)
4.58
(4.44)
4.03
(3.90)
3.47
(3.36)
2.84
(2.75)
シフターまわり

2010TRSには、インター8変速コンポのトップグレードのALFINE(アルフィーネ)の変速レバーが採用されています。 マウンテンバイクやフラットバーロードの上位機種に採用されているラピッドファイヤーです。グリップの掌のホールドを保ちながら、シフティングができる極めてスポーツ志向の高いスペックです。 ただし、左写真でシフトアップレバーとシフトダウンレバーの位置関係は、MTB/フラットバーロードとは逆になります。

(2015/4/4)
内装変速について追記

  上に書きましたように、内装変速は8段を使用すれば、現在のフロントトリプルのギヤレンジをもカバーできますし、シンプルな外観、チェーンが外れにくい(絶対に外れないわけではありません)など、メリットも多いのですが、やっぱり後に変速機がぶら下がっている方がスポーツバクらしい、というイメージからか、どうも大きく普及しません。
  少しだけデメリットもあり、一番の要因は重量の点でしょう。内装8段のハブはハブだけでアルミフレームより重い場合もあったりします。また、クイックレバーでホイールを外すことができない事。これは何もスポーツバイクらしくないということでなく、出先でパンクした場合にチューブ交換が難しいことになります。
  内装変速は、現在踏み込みながらでも変速ができるのですが(でも積極的にされないほうがいいです)、これはハブ軸とフレームの強固な締結が必要であり、簡便に外すことのできるクイック機構を盛り込むことはしばらくの間難しいでしょう。

変速システムはスポーツバイクの華ですね、やっぱり

  変速は、スポーツバイクで一番の花形です。今まで色々な機構が発明・提案されてきたところです。リヤ変速の段数にしても3段にはじまって、今ではリヤ10段まで進化しました。扱い方も非常にラクになってきています。
  変速というとなんだか難しいように思うのですが(上記のダラダラした説明でさらにややこしい・・・)、もっと積極的に使って、速く走るというのでなくラクに走るトライをしてみてください。
  なお、変速システムはスポーツバイクの目玉でもあるだけに、色々な魅力的な部品が販売されていたりします。変速方法がラクになったのは、変速やギヤなどをシステムで構築するようになったためです。したがって後の変速機だけを交換してもうまく作動しない場合があります。部品の互換性などは専門店さんでご相談の上、検討されることをお勧めします。
  それにしても、昔は変速付のスポーツ車(ツァー車とも言いました。「ツアー」でなく「ツァー」が渋い!)は夢でもあり、ツァー車を見かけると後に並んだギヤの枚数を数えて、「4段、いや5段、いいなあ」とあこがれた時代もありました(私の時代ではないですよ。聞いた話です)。今では小さな子供さんでも、6段や7段変速の付いたCTBや、前にも変速の付いたシティタイプのマウンテンバイクに乗ってます。それら自転車の純粋なスポーツバイクとしての性能ははさておき、変速段数の面を捉えるといい時代になったと思うのですが、反面子供さんたちにとって自転車の価値観が、どうも相対的に下がってしまったのは残念なことです。クリスマスプレゼントにお父さんがCTBを買って帰ったら子供さんは泣いてしまった。それより新作のゲームソフトが欲しかったとのことだったようです。いやはや・・・。もっとスポーツバイクを積極的に楽しんで、もっと、もっと子供さんたちにも自転車の素晴らしさを伝えたいものです。